効果算定 現状把握

工場の電気代の計算方法と算出事例、削減方法をご紹介

工場や製造業を運営する上で毎月の経費として多くを占めるのが電気代です。

電気代を抑えることが経費削減に繋がりますが、電気代を抑えるためにはまず現状の電気代を把握し、削減方法を検討することが重要です。

今回は、工場の電気代の計算方法と計算事例、電気代の削減方法についてご紹介いたします。

工場の電気代|計算方法

一般的な工場の契約電力(高圧電力※)の計算方法は以下の通りです。

※高圧電力…供給電圧が6000Vの電圧規模。契約電力50〜2000kW未満。直流で750V超7,000V以下、交流で600V超7,000V以下のもの。

電気代 = 基本料金+電力料金+再生可能エネルギー発電促進賦課金

それぞれの項目や求め方について詳しく見ていきましょう。

基本料金の求め方

基本料金とは、電力会社が契約プランごとに設定した固定料金のことで、電気の使用量に関わらず毎月かかる固定費のことです。

基本料金 = 基本料金単価 [円/kW] × 契約電力[kW] × (185 − 力率[%])/100

  • 基本料金単価 [円/kW]  …各電力会社が設定する1kWごとの単価で電力会社のWebサイトで公開されています。公開されていない場合は問い合わせてみると良いでしょう。
  • 契約電力[kW]  …毎月使える電力量の上限のことで、過去一年間の最大需要電力を元に決定されます。契約電力は電気料金明細書に記載されています。
  • 力率[%]…供給された電力に対し実際に消費された電力の割合のことで、力率85%を上回ると基本料金が割引、下回ると割増になります。力率は電気料金明細書に記載されています。

電力量料金の求め方

電力量料金とは、使用した電力量に応じて発生する料金のことです。

電力量料金 = (電力量料金単価[円/kWh] × 使用電力量[kWh])+(燃料費調整単価[円/ kWh] × 使用電力量[kWh])

  • 電力量料金単価 [円/kWh]…1kW(1,000W)1時間あたりの料金単価。電力量料金単価は、夏季(7月〜9月)とその他季(10月〜6月)で分けられます。電力量料金単価は電気料金明細書に記載されています。
  • 使用電力量[kWh] …1kW(1,000W)の電力を1時間使ったときに使用した電力量のこと。使用電力量は、夏季(7月〜9月)とその他季(10月〜6月)で分けられます。使用電力量は電気料金明細書に記載されています。
  • 燃料費調整額[円/kWh]…燃料費調整制度に基づいて決められる発電の燃料費のこと。燃料費調整額 =(燃料費調整単価) × (使用電力量)で求めることができます。燃料費調整額は、電力会社の公式サイトや月々の検針票でも確認できます。

再生可能エネルギー発電促進賦課金の求め方

再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)とは、太陽光や風力、バイオマスなどの再エネを普及・促進するために電気使用者が負担する費用です。1ヶ月の使用電力量と単価を掛け合わせて決まります。 

再生可能エネルギー発電促進賦課金 = 再生可能エネルギー発電促進賦課金[円/kWh] × 使用電力量[kWh]

  • 再生可能エネルギー発電促進賦課金[円/kWh] …経済産業省により決定されます。2021年5月分から2022年4月分までは1kWhにつき3円36銭です。

工場の電気代|算出事例

ここまで工場の電気代の求め方について計算式をご紹介しましたが、実際の計算事例を参考に見てみましょう。

事例:小~中規模の工場(高圧電力A、契約電力500kW以下、10月)の場合

計算に必要となるデータ

基本料金単価1,200円/kW
契約電力150kW
力率90%
使用電力量 ※110,000kWh
電力量料金単価 ※116円/kWh
燃料費調整単価-3円/kWh
再生可能エネルギー発電促進賦課金単価 ※23.36円/kWh

参考元:工場の電気代削減は使用状況の把握がカギ!電気代の算出と削減の方法

※1)計算に使用する電力量料金単価と使用電力量は、夏季(7月〜9月)と、その他季(10月〜6月)で分けられますので、計算したい月の電力量料金単価と使用電力量を電力会社のWebサイトや電力明細から確認しましょう。

※2)2021年5月分から2022年4月分までの単価を参考にしています。再エネ賦課金は毎年異なり、経済産業省から発表されます。

①基本料金の算出

基本料金単価 [円/kW] × 契約電力[kW] × (185 − 力率[%])/100

1,200 [円/kW] × 150[kW] × (185 − 90[%])/100 = 171,000円

基本料金は171,000円になります。

②電力量料金の算出

(電力量料金単価[円/kWh] × 使用電力量[kWh])+(燃料費調整単価[円/ kWh] × 使用電力量[kWh])

(16円/kWh×10,000 kWh)+(-3円/kWh×10,000kWh)=130,000円

電力量料金は130,000円になります。

③再生可能エネルギー発電促進賦課金の算出

再生可能エネルギー発電促進賦課金[円/kWh] × 使用電力量[kWh]

3.36円/kWh×10,000 kWh =33,600円

再生可能エネルギー発電促進賦課金は33,600円になります。

④電気代の算出

基本料金+電力料金+再生可能エネルギー発電促進賦課金

171,000円+130,000円+33,600円 = 334,600円

10月の電気代は334,600円になります。

工場の電気代を削減する方法3選

ここまで工場の電気代を算出する方法や事例についてご紹介しましたが、工場の電気代を削減するためにはどうしたら良いのでしょうか?実践しやすく削減効果が高い方法を3つ厳選してご紹介します。

1.新電力に切り替えて電気料金全体を下げる

新電力とは、電力自由化によって電力会社が自由に選べるようになってから、新たに電力事業に参入した電力会社のことです。

ほとんどの新電力では大手電力会社よりも安い料金プランを提供しており、新電力に切り替えることで電気料金を削減することが可能です。

新電力の中には、バイオマス発電や太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギーを調達・販売しているところもありますのでCO2削減効果も期待できます。

切り替え手続きのみで特別な設備投資が必要ないため、導入コスト0円で電気代を大幅に削減することができます。

ただし、新電力会社は600社以上あり、継続性がない企業は事業撤退や倒産の恐れもあるため、電力会社の安定性や将来性も考慮して選ぶようにしましょう。

また、新電力は契約期間内に解約すると違約金が発生する場合がありますので、契約する前に契約期間や違約金について確認するようにしましょう。

2.デマンドコントローラーの導入で電気の基本料金を下げる

画像引用元:九州電力

「デマンドコントローラー」とは、使用電力の最大値(デマンド)を抑えることにより電気代の基本料金を安くするためのシステム装置のことです。

電気の基本料金は、1日の中で最も使用電力が多かった30分間の最大値(デマンド)で決定されますが、電力の見える化や空調や照明の自動制御機能を搭載した「デマンドコントローラー」を導入することで、使用電力の最大値を抑えることができ電気代削減に繋がります。

「デマンドコントローラー」は業務用や高圧電力契約を結んでいる場合に高い節電効果を発揮しますので工場の電気代削減に最適です。

電力の自動制御機能を搭載した「デマンドコントローラー」の相場は1台あたり18万円~150万円となっており、電力の自動制御はありませんが予め設定した上限を超えそうになった場合にアラートが出る「デマンド監視装置」の場合は、1台あたり9万円~45万円が相場となっています。※メーカー、装置の機能によって価格は異なります。

3.LEDの導入で照明にかかる電気代を削減する

画像引用元:高天井用水銀灯型LED照明

空調の次に電気使用量が多い照明ですが、水銀灯からLED照明に変えるだけで電気代の1/3を削減できます。

また、人を感知すると自動で照明がON/OFFする人感センサー付LEDを導入することで、電気料金を最大95%削減できるとも言われています。

▼年間稼働時間3000時間の倉庫(点灯率20%)の場合の消費電力

1日10時間稼働、年間300日営業を想定しています。

照明種類消費電力計算式消費電力電力削減率(水銀灯比)
水銀灯400W×3000時間÷10001,200kWh
LED照明100W×3000時間÷1000300kWh水銀灯比75%減
人感センサー付LED102W×0.2 ×3000時間÷100061.2kwh水銀灯比95%減

参照元:水銀灯からLEDに交換するとどれくらいの効果がありますか

また、LED照明は長寿命で約10年間使用できるだけでなく、発熱が少ないので夏場の空調への影響が少ないのもポイントです。

このほか設備導入コストはかかりますが、自家消費型太陽光発電や産業用蓄電池の導入なども工場の電気代削減には大変有効です。

工場の省エネ・電気代削減方法9選|取り組む際のポイント>

まとめ

今回は、工場の電気代の計算方法と計算事例、電気代の削減方法についてご紹介しました。

工場の電気代を削減するためには、現状の電気代を把握し「どのくらい削減したいのか?」目標値を明らかにしてから削減方法を検討すると良いでしょう。

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